司法書士の目から見た会社法入門Q&A

<第7回> 特例有限会社について

司法書士 大越一毅

このコーナーは、平成18年5月1日に施行された会社法について、平易な言葉で分かりやすく説明するものです。 

毎回テーマを決め、これから起業を考えている方および現在会社を経営している方にも役立つ情報を提供していきたいと考えています。 

第7回である今回は、前回の告知通り、「特例有限会社について」です。 

1. 「特例有限会社」とは

会社法の施行に伴って、有限会社法は廃止され、新規に有限会社を設立することはできなくなりました。 

これは、株式会社の最低資本金制度が撤廃され、かつ機関設計の柔軟化によって、従来の有限会社とほぼ同様のスタイルである株式会社を設立可能になったからです。 

とはいえ、既存の有限会社を会社法施行と同時に消滅させるわけにはいきません。 

そこで、既存の有限会社を、商号の中に有限会社の文字を用いながら、株式会社として会社法施行後も存続できることとしました。 

そのような有限会社を「特例有限会社」といいます。 

特例有限会社」も、会社法下での株式会社なので、会社法の適用を受けます。 

ですが、既存の株式会社や新規に設立した株式会社と違って、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「整備法」という。)による制限を受けます。 

特例有限会社」は、今のところ、自分で希望しない限り、他の会社形態に変更する必要はなく、今後も特例有限会社として事業を継続して構いません。もちろん整備法の制限のない株式会社に変更することも可能です。 

 

2. メリット

では、「特例有限会社」でいることのメリットは何でしょうか?それは次のとおりです。

 

  1. 有限会社の文字を記載した商号をそのまま使用できること 

    通常の株式会社に変更すると、法務局や税務署など専門家に任せられる手続だけでなく、名刺・看板・銀行口座の変更や取引先への挨拶状の送付が必要になります。このコストや労力は意外にあなどれません。規模が小さい会社であればあるほど、その負担は大きいと感じるでしょう。 

    特例有限会社」のままであれば、原則として、何の変更手続も要せずに事業を継続できますので、コストもかかりません。 

  2. 役員の任期制限がないこと 

    通常の株式会社の役員には任期があり、取締役であれば、原則として2年、最長でも10年までです。任期が満了すると、同じ人が再任する場合でも、株主総会で再選し、再任の登記手続をする必要があります。 

    特例有限会社」であれば、役員任期の制限はなく、20年でも30年でも継続して役員を続けることが可能です。したがって、任期満了に伴うコストが不要です。 

  3. 決算公告が不要であること 

    通常の株式会社の場合、毎年定時株主総会で承認された貸借対照表(損益計算書が必要な場合もあります。)を所定の公告方法(官報等)で公告する必要があります。 

    これは、どのような規模の株式会社でも義務であり、公告をしなかった場合には、過料の制裁を受ける可能性があります(但し、実際には殆どの株式会社が決算公告をしていないにもかかわらず、過料の制裁は受けていないというのうが現状です。とはいえ、法律違反であることには変わりありません。)。 

    特例有限会社」であれば、決算公告義務がないため、公告の必要がなく、公告にかかるコスト(最低でも6万円程度)が不要です。

3. デメリット

では、反対に「特例有限会社」でいることのデメリットは何でしょうか?それは次のとおりです。 

  1. 機関設計が限定されていること 

    会社法のコンセプトの1つに、機関設計の柔軟化があり、株式会社は企業規模に応じた機関を選択できるようになりました。 

    他方で、「特例有限会社」は、株主総会・取締役・代表取締役・監査役しか設置できず、取締役会や会計参与などを設置することはできません。 

  2. 株主間の株式譲渡制限がないこと 

    通常の株式会社では、株式譲渡制限の内容を自由に定めることができ、譲渡承認機関を代表取締役としたり、一定の場合は譲渡承認不要とすることも可能です。 

    他方で「特例有限会社」は、譲渡制限の内容が全て一律です。 

    その内容は「当会社の株式を譲渡により取得することについて当会社(株主総会)の承認を要する。但し、当会社の株主が当会社の株式を譲渡により取得する場合においては当会社が承認したものとみなす」です。 

    したがって、株主間の株式譲渡が自由なため、会社(オーナー)の知らないところで、少数株主間の持分比率を変動されることが可能となり、下手するとクーデターに悪用されかねません。 

  3. 組織再編行為に制限があること 

    特例有限会社」を存続会社として吸収合併することや、同様の吸収分割等は認められません。

4. まとめ

特例有限会社」として存続すべきかどうかは、個々の会社の事情によりますが、新たな組織再編行為を考えず、従前の会社運営を継続したいというのであれば(特に家族経営の会社など)、特例有限会社のままでも特に支障はないでしょう。 

次回は、「特例有限会社を通常の株式会社に移行する方法」を予定しています。

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