司法書士の目から見た会社法入門Q&A

<第13回> 全部取得条項付種類株式

司法書士 大越一毅

このコーナーは、平成18年5月1日に施行された会社法について、平易な言葉で分かりやすく説明するものです。 

毎回テーマを決め、これから起業を考えている方および現在会社を経営している方にも役立つ情報を提供していきたいと考えています。 

第13回である今回は、前回の告知通り、「会社法で活用法が増えた種類株式~全部取得条項付種類株式~」です。 

 

 

1. 「全部取得条項付種類株式」とは

全部取得条項付種類株式とは、当該種類の株式について、会社が株主総会の決議によってその全部を取得することができる株式のことです(会社法第108条1項7号、同法第171条)。 

この種類株式は、会社法の施行によって新たに導入されました。 

旧商法下で、同種の株式は存在せず、100%減資をする場合など株主の総入れ替えをするには総株主の同意が必要と解釈されていました。 

しかし、会社再建等で100%減資を条件に出資・融資してくれる会社があった場合に、一部の少数株主が反対するだけで手続が不可能になるなど、円滑な手続が困難でした。 

それを解消することを期待して導入されたのが、全部取得条項付種類株式です。 

一方、後述の通り、多数決原理で利用できるため、100%減資以外にも利用が可能で、会社にとっては少数株主対策の一方法として非常に重要かつ効力の大きい種類株式です。 

全部取得条項付種類株式の主な特徴は以下の通りです。 

1. 全部取得条項付種類株式の設定・取得は株主総会の特別決議で決定する。
2. 取得の対価は別の種類株式や金銭等制限はない。無償取得も可能。
3. 取得時期に制限はない。

特に、1が最大の特徴です。特別決議が成立すれば自由に設定できるため、オーナー株主が所定の株式数を保有していれば、オーナーの意思でいつでも発行・取得が可能です。 

この点、オーナー株主の自由に発行が可能なのは株主平等原則に反するのではとの意見もありますが、法律上の規制は現状ありません。 

株主保護のための規定として、反対株主の株式買取請求権(会社法第116条1項2号)や取得対価の財産規制(会社法第461条1項4号)があります。 

ですが、買取請求権を行使しても買取価格はともかく終局的には会社に株式買取されますし、財産規制違反も手続無効にはならず、又無償取得の場合にはあまり意味がない規制でしょう。 

 

2. 定款記載例

全部取得条項付種類株式を発行する場合、他の種類株式と同様に、その内容を定款に定め、登記する必要があります。 

定款記載例は以下の通りです。 

 

全部取得条項付種類株式(無償取得の場合)
第○条 当会社は、株主総会の特別決議で、会社法第171条第1項各号に規定する事項を定めることにより、甲種類株式の全部を無償で取得することができる。

3. 100%減資以外の利用方法

100%減資以外の利用方法で最も多いのが、敵対的少数株主排除でしょう。 

これは上場企業に限らず、オーナー以外の株主がいる会社であれば、中小企業でも利用が必要になる可能性が常にあります。 

既存の株式全てを全部取得条項付種類株式にし、一旦取得するのと同時に、会社が希望する株主のみ新たに株式を引受けするのが基本スキームです。 

これによって、会社と敵対する株主は、株主から排除されるので、その後の会社経営がスムーズになるでしょう。 

上場会社では、新たに引受けさせるのは金額的にも株主数的にも困難なので、一定の比率の別種類の株式を取得対価とし、その比率未満の株主をまとめて排除するスキームで行っているようです。 

その他にも当該会社を100%子会社化する目的でも利用されています。 

 

4. まとめ

全部取得条項付種類株式は、会社法施行時から利用方法が着目されていたので、他の種類株式に比べ、実際に利用している会社は多いと思われます。 

ですが、株主総会決議内容・実行手続が単に全部取得条項付種類株式を発行するだけでは目的を達成できず、非常にテクニカルで細部にも注意が必要です。 

所定の期間を空けて、株券提供公告や反対株主の株式買取請求のための通知が必要なこと等、株主総会以外の手続も多いです。 

全部取得条項付種類株式を発行する場合、通常反対株主がいるでしょうから、これらの手続に漏れがあると、後々反対株主から手続無効等の訴えを起こされる要因となります。 

登記手続も含めて、全部取得条項付種類株式を利用するスキームを検討する場合には、専門家に相談されるのが宜しいでしょう。 

次回は、「会社法で活用法が増えた種類株式~議決権制限付株式、拒否権付株式~」を予定しています。

 

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