司法書士の目から見た会社法入門Q&A

<第12回> 取得請求権付株式、取得条項付株式

司法書士 大越一毅

このコーナーは、平成18年5月1日に施行された会社法について、平易な言葉で分かりやすく説明するものです。 

毎回テーマを決め、これから起業を考えている方および現在会社を経営している方にも役立つ情報を提供していきたいと考えています。 

第12回である今回は、前回の告知通り、「会社法で活用法が増えた種類株式~取得請求権付株式、取得条項付株式~」です。 

 

 

1. 「取得請求権付株式、取得条項付株式とは」とは

取得請求権付株式とは、株主が、会社に対して自分の株式を取得するよう請求できる株式のことです(会社法第107条1項2号、第108条1項5号)。 つまり株主に選択権があるプット・オプション(売る権利)が付いた株式といえます。 この取得請求権付株式は、株主が望むときに投資したお金の回収が原則として可能になるので、株主(投資家)側にとってメリットがあります。 

一方、取得条項付株式とは、当該株主の同意なしに、一定の事由が生じたことを条件に強制的に会社が取得できる株式のことです(会社法第107条1項3号、第108条1項6号)。
つまり会社に選択権があるコール・オプション(買う権利)が付いた株式といえます。 この取得条項付株式は、株式の分散・譲渡対策などに利用でき、会社側にとってメリットがあります。 

また、上記2つの株式を取得する対価は、現金だけでなく、他の種類株式・社債・新株予約権など定款に柔軟に定めることが可能です。 

 

2. 会社法下での変更点、定款記載例

旧商法下では、取得請求権付株式及び取得条項付株式という用語はありませんでした。ほぼ同趣旨の内容の株式として、対価が金銭であれば義務償還株式・強制償還株式、対価が他の種類株式であれば転換予約権付株式・強制転換条項付株式がありました。 取得請求権付株式及び取得条項付株式は、これら旧商法時代のものを統合し、より柔軟にしたものです。 
なお、取得請求権付株式及び取得条項付株式を発行する場合、その内容を定款に定め、登記する必要があります。 


定款記載例はそれぞれ以下の通りです。 

 

1. 取得請求権付株式(対価が金銭の場合)  

  第○条 株主は、次に定める取得の条件で、当会社が株式を取得する

  のと引き換えに金銭の交付を請求することができる。

 

  1. 取得と引換えに株主に交付する金銭の額

    最終の貸借対照表の純資産額を発行済株式総数で除した額に対象

    株式数を乗じた金額とする。

 

  2. 取得請求が可能な期間

    平成○○年○月○日から平成○○年○月○日までとする。

 

2. 取得条項付株式(対価が金銭の場合)

  第○条 当会社は、株主に次に定める事由が生じた場合には、

  次に定める取得の条件で、当会社が金銭を交付するのと引き換えに、

  当該株主より株式を取得することができる。

 

  1. 取得事由

    a) 自然人である株主が死亡したとき

    b) 株主が破産又は民事再生の申立をしたとき

 

  2. 取得と引換えに株主に交付する金銭の額

    最終の貸借対照表の純資産額を発行済株式総数で除した額に

    対象株式数を乗じた金額とする。
 

3. 中小企業の資金調達手段としての利用価値

(1) 取得請求権付株式の場合 

非上場会社の株式は、買い手の需要がほとんど無い上に、通常、株式譲渡制限が付与されているので、売却して換金するのは困難です。なおかつ、株主配当が行われることもめったにありません。したがって、創業者や縁故者以外で中小企業の株式に出資してもらうことは困難でしょう。将来性のあるベンチャー企業であれば、ベンチャーキャピタルなどが出資してくれるケースもありますが、通常、全くの第三者から出資による資金調達をすることは考えにくいです。 

しかし、例えば取得請求期間が5年後からスタートする取得請求権付株式を発行すれば、5年経過後、出資者は会社に取得請求権を行使して投下資本を回収できる可能性は高く、取得条件や会社の業績によっては、大幅な利益を得ることも可能でしょう。少なくとも普通株式に出資するよりは出資者は保護されます。 そういう内容の株式であれば出資しても構わないという人・会社はベンチャーキャピタルでなくとも多いと思います。 

一方、会社側としても、5年後から取得請求期間がスタートすることにすれば、すぐに株主から取得請求権が行使される心配もなく、長期・中期事業計画に応じて株式を発行し、資金調達が可能になります。 

(2) 取得条項付株式の場合 

取得請求権付株式よりも会社側にメリットのある株式なので、資金調達目的で発行されることはないかもしれませんが、取得対価の条件で利益の上がったときのみ会社が取得できるような設計にすれば、イニシアティブが会社にある株式でも、出資をしてくれる人・会社は少なくないと思います。 

それに、通常の株式は、会社が買い取りして出資者にお金を返金することが予定されていないので、あえてこのような内容の株式を発行することを登記簿上公示すれば、投下資本の回収に積極的な会社であるとアピールすることにもつながると思います。 

 

4. まとめ

取得請求権付株式及び取得条項付株式の利用方法は、これからまだまだ研究の余地がたくさんあると思います。次回以降解説する予定の、「議決権制限付株式」等他の種類株式とミックスさせることにより、より利便性は増すと考えます。 

取得請求権付株式及び取得条項付株式の内容は原則として自由ですが、あまりに不平等なものは株主平等原則に反するかもしれませんし、その発行手続は発行する株式の内容によって変わる場合があります。 

登記手続も含めて、これらの株式を発行する場合には、専門家に相談されるのが宜しいでしょう。 

次回は、「会社法で活用法が増えた種類株式~全部取得条項付種類株式~」を予定しています。

 

 

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